deeplytruly diary

愛と音楽のある生活 ありのままの普段の暮らしを記録していくブログ

ゾンビの中心で、愛をさけぶ(ネタばれ注意)

変な映画を見た。けれど、妙に感動した。

 

 

 

自粛生活が始まったころからプライムビデオにすっかりお世話になっているのだが、普段あまり見ないゾンビ物をと思って、嫌がる夫を説得し「ゾンビの中心で、愛をさけぶ」(原題「ZOO」)を見た。2019年の映画で、なんとなく映画館でこの予告版を見たことがあるような気がして気になったのだ。

ジャンルはホラーだったし、ゾンビものという期待感で(普段見ないのでワクワク)いっぱいだったのだが、始まってみたらゾンビは全然出てこない。

 

倦怠期でなんとなくすれ違う夫婦が主人公。それにはわけがあるのだけれど。ある日人々がゾンビ化する伝染病が発生し、外ではみるみる感染が拡大、二人はマンションの部屋に閉じこもり救助を待つことに。状況が悪化する中ゾンビの脅威だけでなく、マンションの隣人との不穏な空気や強盗など、様々なトラブルが二人を襲う。救助を待つ間に食料も尽きてきて、脱出を試みるけれど・・。

 

ゾンビ映画と思ってみると、え?という展開。というのもゾンビはほんのちょっとしか出てこないから。これはどちらかというとラブストーリーの部類なんだと思う。

そういう理由から評価は割れていて、退屈だというレビューも多いのだけれど、私は妙に感動してしまって、そしてとても印象深い映画の一つになった。

 

というのも、この夫婦の関係性が変わっていく様子がすごく共感できるものだったのだ。この夫婦は子供の死産がきっかけでなんとなくギクシャクしてしまい、その関係は冷え切って崩壊寸前というところから物語は始まる。お互いへの関心とか、一緒に何かするという感じでもなくて、一応夫婦としては成り立っているけれどいつ壊れてもおかしくない、妻のほうは言いたいことがあるのだけど、それをなかなか言えずにいたりする。夜寝るときも、一緒のベッドにはいるのだけれどなんとなく距離感があって、見た感じベッドにクッションで境界線があるような状態だった。

 

それが、伝染病の拡大でマンションの自室にこもり救助を待つという状況になり、協力せざるを得ない状況になっていく。妻のほうがなんだかぶっとんでいて、仕事柄らしいのだけれど覚せい剤やら銃やら、隠し持っていたものがどんどん出てくる。夫は最初はドン引きしているのだけれど、なんというかとてもやさしくて、話を聞いてくれる姿勢もあって、二人の歩調がだんだんあってくる。

 

備えあれば、という夫の提案で二人でトレーニングをしたり武器を用意したり、妻のほうはワインを飲みながらだったりクスリをやりながらというのがおかしかったのだけど、一緒に何かするというのがとてもいいなと思えた。

 

いくつかの危機を乗り越えるなかで、二人の絆はどんどん深まっていく。一緒にお風呂に入って心の内を打ち明けたり、未来のことを話したり、寝るときも手をつないで寝るようになったり。もう一度最初から関係を築こうと、おしゃれをしてデートをしてみたり。

あぁ、やっぱり夫婦はいいな、と妙に感動した。

 

そしてとうとう食料も尽きてマンションを脱出しようと試みる二人。武器を用意して、装備を整えて挑むのだけど、これがなんと失敗、結局また部屋に戻ってきてしまう。

そしてなんということか、妻のほうが噛まれたというのだ。

 

妻が感染しただろうということになったとき、私はてっきり早い段階で夫が妻を殺してしまうのではないかと思った。

だけど違った。生きていれば発症しないのではないか、もう薬が開発されているのではないかと前向きな話をし、そして将来の夢を語りあって、希望を持たせようとしてくれる。キャンドルいっぱいのお風呂を用意してくれて、なんと飢えを感じるという妻に自分の血を飲ませてあげた。まるで赤ワインをもっていくかのようにお風呂の妻に血の入ったグラスを渡す。このあたり、涙が出た。

最後は結局悲しい結末ではあったのだけど、どんな時でも一緒にいて、どんな時でも見捨てず離れず、愛を貫く夫婦の姿はとても美しく感じた。

ゾンビが全然出てこない、救助が全然来ないなど突っ込みどころはたくさんあるのだけれど、夫婦の愛の話としてみると、これがなかなかいいお話。なんとなく、コロナ禍の今の生活を重ねてみたり。もし会話もなく、一緒にいるのが苦痛な間柄だったら、どんなに苦しかっただろうなんて考えてしまう。こういう時だからこそ、助けあったり、一緒に何かをしたり、より関係を深めていけたら素敵だ。

 

映画を見終わってすっかりあきれている夫に、もし私がゾンビになったらどうする?血を飲ませてくれる?と聞いてみた。そしたらますますあきれられて、とりあえず薬ができるまで檻に入れて生かしておく、というおざなりな答え。

平和で変わりばえのしない生活の中にいると、ともすると大切なことを忘れがちだ。本当はありがたいものも、あって当然のように思ってしまったり。この映画のような非日常はないかもしれないが、たとえばコロナもしかり、災害とか、病気とか、ケガとか、日常が一変するようなことが起こる可能性は誰にでもある。そうなって初めて大切なことに気が付いたら、どうしてもっと一緒の時間を大切にしなかったんだろう、どうして最後にあんなことを言ってしまったんだろう、どうしてもっと優しくしなかったんだろうときっと後悔してしまうだろう。だから、日ごろから感謝の気持ちを忘れないで過ごしたいものだ。

年をとっても、どちらかが病気になっても、動けなくなったとしても、お互いに支えあって、お互いを大切にして、最期のその時まで愛のある夫婦でいたいな、と密かに思うのであった。