サンマルティーニのチェロソナタを聴きながら 人生の最後の日を思う
なんとなく元気が出ないときとか、嫌なことを考えてしまったようなときに最近よく聴く曲がある。サンマルティーニ作曲のチェロソナタだ。
サンマルティーニというのは正直あまりメジャーではないと思うのだけど、1700年頃というとヴィヴァルディと同じころの人なのだろうか。
たまたま出会ったこの曲、かわいらしくてすぐにお気に入りの一曲になった。いくつか動画を見ていて、最高に素晴らしいのがこのレナードローズの演奏。
1楽章は生き生きと、はつらつとした感じ。2楽章は緩徐楽章でこれが本当に美しい。3楽章はまた軽快なテンポの元気な曲。なんとなくすっきりする。
妄想しがちな私だけれど、この曲を聴いていて思ったのは、人の一生について、そして命のサイクルについてだ。特にこの演奏の2楽章がたっぷり歌って聴かせてくれてあまりにも素敵で、心を打たれずにはいられない。
思い起こしたのは、人生最後の日。でもそれは苦しみや痛みではなくて、なんというか心穏やかなひと時なのだ。
明るい陽射しの入る部屋、ベッドに横になっている老婦人。周りには愛する夫、子供、そしてたくさんの孫やひ孫。愛する人達に囲まれて、最期のその時を待っている。
お別れだから悲しさはもちろんあるのだけれど、なんの後悔もなくて、愛して、愛されて、幸せだったな、ありがとう、みんな元気で、みたいなそんな感覚を思い起こさせるのだ。
どうしてかはわからない。最近身近な人の死に直面したわけではないのだけれど、人生最後の日のことを考えるなんて。最後の最後のその瞬間まで愛に満たされていて、それを忘れないということを感じさせてくれる曲なのだと思う。私にとっては。
1楽章はまるで春の命の芽吹き、2楽章では人の死、3楽章では、それでも続いていく命のサイクル。自分が死んでも、子や孫やひ孫や、たくさんの家族たちがそれぞれに命を輝かせていく、そして命はつながっていく。
そんなことを感じさせてくれる曲、そして演奏に今日も感謝したい。